一人暮らしするときには奮発すると決めていたのがカトラリー類。
陶磁器やガラスは割れるし、漆器は剥げる。機能重視の製品はどんどん進化したものがでる。
けれど、カトラリーは壊れることもなければ、これ以上機能が変わることもないから一生使え、逆にえば、気に入らないものを買っちゃうと、捨てるに捨てられず、ずっとそれを気に入らないなと思いつつ使う羽目になるだろうと思ったからです。
また、百均のものなどではなく、定評のあるロングセラー商品を選べば、いっぺんに全部揃えずとも、少しずつ買い揃えられるとも思いました。
と言うわけで自分で初めて買ったのは憧れのクリストフルでした。
銀食器にも憧れていたし、銀食器を普段使いするような丁寧な生活にも憧れていましたし。
それにテーブルマナーをちゃんと身に着けてこなかったことがコンプレックスだったので、ちゃんとしたレストラン、ちゃんとした人たちとの会食で恥を欠かないように、カトラリーを使いこなせるようになりたい、だったらそういう人たち、そういうレストランで使われてるものを普段から使うのが一番手っ取り早いだろうとも思ったからです。
いろんなシリーズがあって、シンプルなパール、クラシカルなマルメゾン、ロマンティックなマルリーも素敵だなと思ったのですが、ロマンティックなものを好きと言うのが気恥ずかしかった当時の私が選んだものはアリアシリーズ。
すっきりと大人っぽくてギリシャっぽさとモダンさの両方があって一目惚れしたのと、お箸も同じシリーズで売っていたことが決め手になりました。
次に買い足したのがEichenlaubと言うドイツのブランド。
当時の私はソニア・パークさんの大ファンで、彼女の著作をバイブルにしていました。
そこで紹介されていたのが、このEichenlaubと言うブランドで、本来はナイフが有名だったようなのですが、私が一目惚れしたのは鋭利なフォーク。細く鋭く長く尖ったフォークの先端に、お肉を食べるためのフォークだ!!!と一目惚れ。早速買い足すことに。
ところが、当時は取り扱われる種類がそんなに豊富ではなく、また割と高価なこともあって、なかなか必要なものが揃わず。テーブルコーディネートが下手な私は上手く使いこなせないまま。
さらには買うときは素敵だと思った木の柄が、ズボラーには洗ったあとの管理が面倒でだんだん使用頻度が減り、結局クリストフルに出戻りました。
(ちなみにソニア・パークさんはクリストフルも前述のショッピングマニュアルシリーズで紹介されています。もう一つ因むと、こちらのカトラリーは今は実家で使われています。帰省するたび、しみじみ綺麗なフォークだなあと惚れ直しています。使いこなせなかった私が悪いのであって、お品自体はとても素敵です。)
で、しばらくはクリストフルに出戻り、使うたびに憧れの丁寧な暮らしをしている…!と悦に入る日々を送っていたのですが、所詮はズボラー。
出張の日の朝、洗い物をする時間が取れずそのまま飛び出て、戻ってきたらシルバーが変色していると言う事態に。
さらに、クリストフルってフランスのメーカーなので、サイズが微妙に日本の庶民と合わないのです。コンビニスイーツ食べる時とかに使う小さじや小さいフォークとして私にとって使いやすいサイズがないのです。(いやシルバーでコンビニスイーツ食べるなって言う話ですな。)
そこで、扱いやすいステンレスで、サイズ展開も豊富で、庶民の食生活にもフィットするもの、なおかつやはり買い足しがしやすいロングセラー品を、と言うことで、デパートをあちこち回って見つけたのがAZUMAのインペリアルシリーズ。
・ステンレスでシンプルデザインなので汚れにくく洗いやすそう。
・ロングセラー
・バリエーションが豊富
・デザインがとてもシンプルで、どんな食事、どんな食器でも馴染みやすそう(これならコンビニスイーツもOK!)
・多くのデパート(特に行きつけのデパート)で単品から取り扱いがあって買い足しやすい
と言うのと共に、ステンレス自体がとてもクリーンな輝きを持っていて、そこも素敵だなと思いました。ステンレスにも色々あるってことをこちらと出会って初めて知りました。
実家のカトラリーは物によっては黒ずんでいますが、こちらは私がひどい管理をしていても常にクリアで綺麗です。すごい!
朝洗い物をサボって放置しても変色しないし、しばらく使わなくても黒ずんだりしないし、酸が強いものやベッタベタのカレーも気軽に食べられる!!
と言うわけでしばらくはこちらを愛用していました。
病を得て、家が荒れ放題だった時期は、クリストフルは黒ずんだまま放置していたので、たまの来客のたびに、こちらのステンレスのカトラリーを買っておいてよかったと思ったものです。
また、こちらはサイズも日本人の感覚に合うのか、いわゆる小さじ、小フォーク、くらいのサイズもいくつか展開されており、来客があった際に一番使うサイズがちゃんと揃えられると言うのも良かったです。
ただ、こちらも数年使っていると、あまりのシンプルさ故にちょっとだけ退屈だなと思うことも。
そのタイミングで、銀器も食洗機で洗うと言う猛者に出会い(「推奨されてはいないけど、今のところ問題ないし、使わない方がもったいないでしょ?」とのこと)、さらに便利な銀器の手入れ用品も手に入れたことで、クリストフルをまた使うようになりました。
何せ使い方が雑なので、気がつくとあれ?ちょっと変色してる?って感じにはなるのですが、人に見せるわけじゃなし、ある程度はそれも味だと割り切るようにもなり、我慢できなくなったらお手入れするって感じで緩く愛用しています。
しばらくぶりに使ってみると、改めて好みのデザインであることを実感したりもして、断捨離しなくてよかったなあと思っています。
で、これで終わればよかったのですが、一人暮らしの私の場合、食洗機は毎食ごとではなく、1日1回ペースで回す方がちょうど良いことに気がつき、だったらカトラリーをもう少し増やしてもよくない?と気がついてしまいました。
それで買い足したのが、ラッキーウッドのバルセロナと言うシリーズの小さじです。
デコラティブな薔薇模様で、「ヨーロッパが憧れだった頃の昭和の日本の庶民が考えるロマンティック」といった趣きのレトロ可愛いシリーズです。
私は、子供の頃から「ピンク(的なもの)が似合わない」と言われ続け、自分自身も「私には可愛い系は似合わない、手を出してはいけない」と縛り続けていて、頑なに花柄などは避けてきました。
潜在意識にそう言うのがあったからクリストフルを購入する際も、マルリーやマルメゾンを選べなかったわけです。
またそういった抑圧から、逆にシンプルモダン至上主義に走っていた期間も長く、だから余計な飾りを欲しがるのは愚の骨頂といった思い込みもありました。
でも、R40にもなってそういう主義主張に縛られ続けている自分がなんだか滑稽に思えてきた、ちょうどその頃にこちらを見つけて、ふと、カトラリーくらいベルバラ趣味でもよくない?と思ったのです。
で、実際に買ってみたら、使うたびに可愛いなあと嬉しくなっています。今となっては、なんであんなに否定的だったのかなあとおかしくなります。
世の中にはアンティークのシルバースプーンをコレクションする人もいるとはきいていたのですが、ハマる気持ちが分かったような気持ちです。
考えてみたら、小さじだったら場所もとらないし、カトラリーの中でも使用頻度の高い実用品だから無駄遣いにはなりにくいですものね。
もちろん百均のぺらぺらのカトラリーでも十分ちゃんと食べられるけれども、一日数回使うものだし、カトラリーの口当たりで味自体も違って感じるし、シルバーに拘らなければ、つまらない飲み会1回分で十分素敵なものに出会え、なおかつこうやって長く使えるものでもあるので、カトラリーに拘ってみるのは割とコスパの良い楽しみだなとおも思います。
今まで切り捨ててきた、こういうキラキラと小さな幸せを、これからは少しずつ積み上げながら生活していきたいな。