Maitre Parfumeur et Gantierというフランスの香水ブランドの有料サンプルをまとめて取り寄せたので、香りの覚書を作ろうと思います。
その昔伊勢丹新宿店メンズ館で取り扱ってたブランドで、懐かしさから今回取り寄せました。
00年代前後もクラシカルな香りが多いなとは思っていたのですが、いくつか好きで使っていた香りはありました。
が、2021年に試したら、思っていた以上に「とってもとってもクラシカル」。普段使いするのは私には難しいなあと思う香りが大半でした。
ウードなどが重めの香りが大流行している今ならいけるのでは、年齢を重ねた今なら使いこなせるのでは、とも思っていたのですが、今の「重い香り」と昔の重い香りとでは性質が全然違うのだなと実感しました。
それとともに、背伸びしてミツコや夜間飛行などクラシカルな名香と呼ばれていたものを使っていた時代を経て、今の自分が等身大の今の香りを好むようになったという変化のせいもあるのだと思います。
というわけで、正直いうと普段使いできる香りはほとんどなかったのですが、欧州の規制で使えない香料が増えたことと、市場へのアピールのため、老舗の名香さえ、香りを変えライト化している現代において、今使える香料で、ここまで昔っぽさを出せるのはすごいことだなあとも思いました。
せっかく取り寄せたので、忘れないうちにそれぞれの香りの感想を残しておこうと思います。(あくまで自分の記憶のために綴る個人の偏った感想ですので、参考にはならないと思いますが。)
BAHIANA
バイアナ。レモン、グリーンフローラル、ウッディがキーワードになっていて、説明としてはコパカバーナビーチの夜とある。旅をテーマとしたシリーズの香り。
香りの構成にはカイピリーニャなんていう単語もあって、おなじくカイピリーニャとブラジルをテーマにしたラルチザンのバチュカーダを思い出させるのだけど、香りの質は全く別。
昔このブランドにハマっていたとき、何を買ってもこれのサンプルをもらっていたのだけど、今ならわかります。確かにこの香り、このブランドの中で一番使いやすいかも。
逆にいうとこのブランドっぽくないのだけど。
リゾート&柑橘系だけどそこまではじけすぎてないので大人でも使いやすいです。背伸びして名香系に手を出していた昔より今の方が素直に好きと思えるところもあるのかもしれないです。
CAMELIA CHINOIS
中国の椿。すごく懐かしい香りなのだけどそれが何なのか思い出せなくてもどかしい…。クリグラーのカメリアの香りも結構クラシカルだったけどそっちよりパウダリーさと青さが控えめで若干フルーティ。
キーワードとしてエキゾチックフルーツ、グレープフルーツ、グリーン、お茶、が挙げられていて、伊勢丹で扱っていた頃に「使いやすい香り」として紹介された覚えがあります。たしかにこのブランドの香りの中ではクラシカルさは控えめかも。
お茶を想像するとちょっと違うかも。
SECRETE DATURA
ダチュラ(毒をもつ花)というと私はセルジュルタンスを一番に思い浮かべるのだけど、クラシカルでオリエンタルなブランドだと思っていたルタンスが使いやすい現代的な香りなのではと誤解するくらいクラシカル。こっちは欧風クラシック。
ダチュラというから、どれだけミステリアスで妖しく香るのかと意気込んで試したのだけど、そこまで毒は感じなかった。舞踏会で恋の鞘当てしているフランスの昔の小説(そんなのありましたよね?)に出てくる若い御令嬢たちがつけていそうなイメージ。
おもしろいのはアルデヒドがパウダーっぽいというよりは昔の石鹸っぽい香り方をすることかな。
このブランドの香りで今回試したものの多くは、女性がドレスを着ていた時代の、でっぷり太った貴族の旦那型や豊満なマダムがつけていそうなイメージなのだけど、この香りは珍しく、マダムじゃなくてマドモワゼル、若い御令嬢がつけていそうな感じがあります。若々しいのにクラシカルっていうの、案外ないので面白いです。
SOIE ROUGE
赤いシルク。
キーワードとしてパイナップル、アプリコット、エキゾチックフルーツのグルマン系+アイリス、カーネーションと挙げられているけれど、並べられたフルーツの香りから想像するような現代的な元気で可愛いリゾート系フルーティノートではないです。
舞台の緞帳のような華やかさと重みを感じる、室内にこもったようなまったりとした甘さ。この香りも昔の御令嬢の香りっぽいというか、年齢層は低めだけどあくまで「昔の」がつくというか。
なんだかなつかしい香りでもあってそれが何だか思い出せずにいます。
ROSE MUSKISSIME
”MUSKISSIME”が私の仏和辞典には掲載されていなかったのだけど、ムスクローズってことかなと。確かにローズだけどROSE OPULENTEほどローズじゃなく、ベリー系の要素も強め。このブランドの中ではわりと現代的というか90年代に流行ったキュートなピンク系のフルーティフローラルの香水っぽい要素をもっている気がします。といってもこのブランドなので、それそのものってわけでもないけれど。
キーワードとしては、ローズ、アイリス、カーネーション、ブラックカラント、エキゾチックフルーツが挙げられています。
ROSE OPULENTE ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ふくよかなローズ。おばあちゃんの棚にこっそりしまわれていたローズ香水っていう感じ。クラシカルな香水に多いアルデヒドなどが強いわけではなく(いや香りの構成的にはフルーティアルデヒドという記載があるのだけど、ローズがそれに勝っています。)、昔のローズアブソリューの精油で作ったローズ香水っぽいというか。フルーティなローズとグリーンよりのローズのぽってりこってりした甘さが主体。
キーワードとしてはグリーン、スパイシー、サンダルウッド、ローズ、ジャスミンとあるけれど、ごりごりにローズ主役の香水って感じました。
香りのキーワードより、香水のイメージ説明の「ペルシャの詩の花の王」「オリエンタルローズガーデン」っていうキーワードの方が私の感じた香りに近いです。
バラ好きなのもあって、今回これがとにかく気に入りました。
FRAISHEUR MUSKISSIME
フルーティムスク。とはいえ、このブランドっぽいクラシカルでパウダリー(アルデヒドの香りだと思う。)な感じが強いので、現代香水の可愛い「フルーティ」とは違うかも。トップはちょっとつんときます。
AMBRE MYTHIQUE
神話的なアンバー。アンバーとあるけど、90年代終わり〜00年代初頭に流行ったあまーいアンバーアコードではなく、こちらのアンバーは樹脂系のお香的なアンバー。そういうアンバーが流行る前のクラシカルな雰囲気が残っているアンバー。
キーワードとしてバニラ、パチョリ、トンカビーン、フランキンセンス、ミルラ、とあったけど、個人的にはシスタスラブダナムってこれかな?と思う香りが特に気になりました。
木と煙のサウナで浄化されている気分になります。
AMBRE PRECIEUX
高価なアンバー。上のアンバーミスティークよりさらにクリーミーな樹脂が混ざった感じ。宗教的なお香っぽさより男性用香水っぽさを感じたけれど、区分としては女性用。
多分男性用っぽいと感じた理由は男性用香水によく使われるラベンダーとバルサム香が理由なのかな。クリーミーと感じたのはバニラが強めだからだと思います。
トップが飛ぶと結構甘いけど、これまた90年代〜00年代のアンバーアコードの甘さとは違うところがこのブランドらしいところ。
こちらのキーワードはマートル、ラベンダー、シスタスラブダナム、バニラ、香油だそう。
AMBRE DORE
黄金のアンバー。アンバー三種のうち、これが一番クラシカルな女性用香水っぽい。寺院系VS俗世系でわけると圧倒的に俗世のアンバー。90年代のアンバー系香水の甘さではなく、それ以前のアンバー系香水の甘さが強いです。
アンバーとウードがキーワードになっているけれど、戦前の香水が残っていました、といわれたら信じてしまいそうな、長期保存された香水のような香りがします。今使用が許可されている香料でもこの昔っぽさが出せるのはある意味すごい。
GRAIN DE PLAISIR
喜びの実、種。トップは涼しげ。スパイシーとあるけれど、クラシカルな香りばかり嗅いでいると、そこまで雄臭くは感じません。パウダリーな香りにスパイスが丸く包まれている感じ。キーワードとしてミント、シトラス、セロリとあったけど、私はアルデヒドとラベンダー+すっきりしたペッパー類っぽさを感じました。
PARFUM D'HABIT
服用の香り。これぞ昔の男性用香水!って感じなのだけど、昔と言っても80年代の押せ押せっぽさじゃなくて、さらにもっと昔の香り。私はトップにはかすかなウッディさとアルデヒドを感じたのだけど、パチョリ、レザー、白檀がキーワードっぽいです。押せ押せすぎないと感じたのはレザーが柔らかだからかな。
JARDIN BRANC
白い庭。名前通り。白いチュベローズがまったり香ってます。
キーワードはジャスミン、チュベローズ、グリーンノート、柑橘系とあるけれど、私は結構最初からザ・チュベローズだなと感じました。
JARDIN DE NIL
昔かなり好きだった香りなのだけど、今かぐとこんなにクラシカルだったっけ?という感じ。
昔はフルーティなバラとゼラニウム(にうっすらとしたハーブ)を強く感じたのだけど、今はこれを覆うアルデヒドを強く感じます。
GARRIGUE
南仏の灌木林。昭和時代の男性用トニックみたいなつんとくるハーバルな香り。
レモン、ミント、ベルガモット、ラベンダーとあるけれど、しゅわっとさわやかな柑橘系っぽさはなく、柑橘系香水が長期保存されたときの香りがします。
ラベンダーそのものというわけではないけれど、そういえばクラシカルな男性用香水ってラベンダーが使われていたなあと思い出しました。トップが柑橘で、ミドルがラベンダー、セージ、ローズマリーとまさにクラシカルな男性用コロンの構成。
でも自分の肌にごく少量をつけてトップが飛んだときの香りが案外柔らか。
これも昔かなり気に入って使っていて、ある日突然酔うようになった香りだけど、合わなくはない香りなのかも?懐かしかったです。
BOIS DE TURQUIE
トルコの森。トップは一瞬すっとします。でもやっぱり基本はこのブランドっぽいクラシカルなパウダリーさ。ちょっと薬っぽいところもあります。
没薬、フランキンセンス、月桂樹
SANTAL NOBLE
高貴な白檀。白檀が主役の昔の香水って、ヨーロッパのクラシカルな香水や中東っぽいオリエンタルさを感じさせるものが多い(+パウダー、+レザー、+スパイスなどの組み合わせだから?)けど、これはかなり和を感じます。昔の扇子や寺院っぽい。結構クリーミーに香る白檀。コーヒー、バニラ、スパイス、白檀がキーワードなのかな。
真っ向臭い白檀は苦手と、昔は避けていた香りだけど今嗅ぐと結構落ち着きます。
番外
上記のメモを取る前に使い切っちゃったため、記憶だけで書いています。
JEUNE HOMME
若い男性のための香りらしいのですが、19世期の若い男性のための香りっていうイメージ。若い頃の私の肌にのせると結構甘く香ってそれが気に入っていたのですが、今使うとやっぱりクラシカルだなと思います。
キーワードはベルガモット、シトラス、ジンジャー、スパイスとあるけれど、最近のシトラス系の香りを想像すると違うかも。19世紀の若い男性のためのトニックの香り。GARRIGUEからラベンダーなどの強いハーブの香りを省いた香りというイメージが近いかなあと。
IRIS BLUE GRIS
ブルーグレーのアイリス。
キーワードはグレープフルーツ、レモン、アイリス、バニラ、ジャスミンとあるけれど、クラシカルなアイリス香水だなと思いました。あくまで女性用なのだけど、どこか男性用香水と共通する香りを感じます。それが「ブルーグレー」っぽさなのかな。香りの構成的にはツリーモスと書かれているものの香料が怪しい気がします。
とはいえアイリスってわりと男性にも似合う香りだと個人的には思っているので、そのせいかもしれません。
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オンラインショッピング、特に日本に入っていないブランドは、どうせ送料がかかると思うとついつい自分の趣味とは異なった香りでも説明が魅力的だと買ってしまい、結果持て余すことが多いというのを、今回も痛感しました。
若い頃はバイアナ、フルールドコモロ、ヴォカリーズ、柑橘系ムスクのやつなども使っていて、特にヴォカリーズは好きでした。今回もヴォカリーズは取り寄せたはずなのだけど、入ってなかった…。他の香りも昔と印象が変わっていたので改めて取り寄せるのはやめようと思います。
そういう香りは結局もてあますことが大半なので(もちろん中には意外と好みのものもありますが)、香りはやっぱり実際に店頭で試せないものは縁がなかったと思って手を出さない方がよいなあと反省しています。
フエギア にはフエギア 香とでも呼びたい、多くの香りに共通するハーバルウッディな香りがあったけど、このブランドのそれにあたるものはアルデヒド、それも昔ながらのアルデヒドで、なおかつ昔の女性用というよりは男性用トニックっぽさが混ざったアルデヒドだと思う。
なので全体的に大変クラシカル。
ちなみに昔結構好きだったヴォカリーズは注文したのに入ってなかった…。