若い頃は、プチプラにも良いものがあると口では言っていても、あくまで「『値段の割には』良い」のであって、結局はお高い商品にはかなうわけがない、と思っていた節があります。
が、色々散財してみて、目的や使用方法によっては、むしろ高額商品じゃないものの方が良い場合もあるなと思うことがちょいちょいあったので、今日はその話。
まず、ファッション関係は、ファッション命、箔をつけたい、格を見せつけたいというのでなければ、便利なアイテムは実は中価格帯の方が豊富にあります。
例えば時計。
高価格帯には伝統とブランド力に支えられた素敵な品がいっぱいあります。
でもこと機能面に関して言えば、apple watchのようなアイテムが出てきた今、機能面では桁数が一桁、あるいは二桁少ない価格帯のものの方が、断然優位になっています。
(今や高級時計の専門誌の編集者がapple watchをつける時代なのです。いろんなしがらみを回避するためというのもあるでしょうけどね。)
例えばジャケットやスーツ。
高価格帯のものは緻密な縫製とともに、定評のある生地を使っています。価値が認められるにはそれなりの歴史が必要です。つまり機能面では、必ずしも最新機能の生地という訳ではないのです。
また流行のちょいゆる系によくある気楽な価格の気楽な作りのジャケットは、カーディガンがわりに羽織れてとても便利なのですが、高価格帯のしっかり作りこまれたテーラードジャケットは(テーラードジャケットとしては着心地がよい方ではあっても)、そこまで気楽に着られる訳ではありません。
さらに、超高価格帯のものは、そもそも過酷な使い倒しを想定して作られたものではありません。
基本的に、他にもいっぱい服を持っている人がたまに着るもの、それも汗まみれになるようなこともなく、気軽にクリーニングに出せること(あるいは優雅に手洗いする余裕があること)を前提とした作りだったりします。
だからオシャレとしてではなく、作業着としてスーツを着る人、真夏に汗だくになりながらガンガン着倒す人にとっては、量販店のスーツの方が、機能性に優れた化繊を使っていたり、自宅で洗濯が可能だったりして、便利だったりします。
シャツなども、高価なシルクのシャツより、安価な化繊のものの方が、自宅で洗えてアイロンかけずに済んで乾きも早く、ストレッチ性もあって、仕事用には便利!みたいなことが結構あります。
例えば傘。
王室御用達、的な老舗ブランドの高価な傘は大体とっても重いです。昔ながらの立派な素材で作られた伝統の重みを感じます。
でも、傘は軽くて丈夫で気軽に使えるものの方が良い、となると、例えばカーボン素材などを利用した軽量な傘というのは、老舗大ブランドからではなく、実用本位なメーカーから出されています。
視界が邪魔されないという点では、数万するような傘よりも、お安いビニール傘の圧勝です(まあ最近はお高いブランドビニール傘なんていうものもありますが。)。
例えばハンカチ
汕頭の手刺繍の真っ白なハンカチは観賞用としては素晴らしいですが、吸水性とアイロンをかけなくて済むという点では、タオルハンカチの方がはるかに使いやすいです。
例えばファンデーション。
デパコスは基本的に、ちゃんとベースを塗って、コントロールカラーやらコンシーラーやら日焼け止めやらを塗ることを前提にしたファンデーションばかりです。
また基本的には、徹底的に日焼け対策をした色白肌の人向けの色展開ばかりです。
そこまでやってられないわ!っていう限界OLが求める「下地不要、日焼け止め不要、1つで全部まかなってくれて、なおかつ色黒にもあう色のファンデ」はドラッグストアブランドの方が選択肢はあるのです。
デパコスにもBBクリームやCCクリームの取り扱いはない訳じゃないのですが、1つで済むっていうのが売りだと思っていたのに、実際は色々重ねることをすすめられるので、???ってなることが結構ありました。
それに、欧米には日焼けがステイタスという文化があるから外資ブランドはブロンザーの展開はあったりするのですが、基本的にデパコスは、美白一辺倒なので、地黒でなおかつそれを恥だと思わない私はいたたまれない思いをすることが結構あります。その点ドラッグストアコスメは地黒向きの色も一応はあるのでホッとします。(完全なプチプラだと色展開が少なめなのでなかったりはしますけどね。)
例えばペン。
実は文房具にも凝ったことがあるのですが、お高い万年筆やボールペンよりも、安価な事務用のボールペンの方が、インク自体は開発が進んでいて使いやすかったりします。ペン軸も軽くて持ち運びしやすいです。
このように、高価格帯と低価格帯では、品質がどうこうというのではなく、そもそも重視するポイントや守備範囲が違うことが結構あるのです。
これが例えばアウトドアアイテムだったりすると、元が実用本位なジャンルだけに、高価格のものの方が、実用面でも上だったりするのでしょうが、ことファッションというジャンルに置いては、必ずしも実用がメインという訳ではなく、それこそファッション性、美しさや、箔付け等も、重要な目的となるために、こういった一見逆転とも思えるねじれの現象がおきるのかなと思いました。
文房具なども、あくまで実用品として使う人がいる一方で、趣味性、物語性を大事にする人が多数いる分野なので、このようなねじれの現象が生じるのだと思います。
(中価格帯を主戦場とするメーカーの方が、高価格帯ブランドのようにブランド力に頼れないため、機能面で切磋琢磨せざるを得ないという側面もあるのかなとも思いますが。)
人が良いというものが使いたくなる性分だったので、R40になるまでは、あまり深く考えず、定評のある高価格帯のアイテムに手を出しがちだったのですが、買ったは良いものの使いこなせずお蔵入りしているものが結構ありました。上記はその一例という訳です。
結局私は実用性を無視できるほど優雅な階級ではない訳で、だから背伸びしてご立派なアイテムを買ったところで使いこなせないのです。
もちろんはなから実用性を度外視してときめき重視で背伸びして買って幸せな気分で使えたものもそれなりにあるのですが。
別に高いアイテムがぼったくりだとかそういうことを言っている訳ではありません。
エルメスのスカーフなどをみていると、1枚の布にこれだけの色を使い、こんなにも綺麗に発色させ、こんなにも綺麗なラインを出せるだけの技術があるのかと惚れ惚れします。
高くても長く愛され続けてきたものには高いなりの理由があるなと感じさせられることがほとんどです。
ただ、それも結局受け手にそれを受け入れられる土壌があってこそなんですよね。
私は、文化としての美しさより、日用品としての実用性&機能性を重視するタイプで、予算が潤沢なら前者を楽しむ余裕もなくはなかったけれど、今はその余裕もないですし、持ち物を減らしていくと、前者のようなアイテムをやたらと溜め込むことが重荷になってきてしまいました。
だからこそ、今後何かを買うときは、高ければ良いと決めつけず、そのアイテムに自分が何を求めるのか、美的なものやブランド力を求めるのか、それとも機能性、実用性を求めるのかをよく考えて選択すべきだなと思いました。