こざっぱり!

自分を変えようと奮闘中の闘病中R50独身女。ひっそり楽しくこざっぱり暮らしたい。体調変動が激しいので、投稿には波もあるし予約投稿も多いです。反応のタイムラグはごめんなさい。

2020年買ってよかった本・マンガ

コロナを言い訳に、電子書籍で散財しまくった一年でした。

なので、本とマンガでよかったものを徒然に。

基準は私が今年(シリーズものは最新刊を)読んだ作品です。電子書籍以外も含みます。(とはいえ、従前から読んでいるシリーズについては書き漏れもあるかも)

 

1 スヴェトラーナアレクシエーヴィチ 「戦争は女の顔をしていない」

今読むべき本だなと思ったし、こういうジャンルの本を電子書籍化してくれたことにも敬意を評して。きちんと語る言葉が持てない自分が嫌になるけど。

 

2 ハン・ガン 「すべての、白いものたち」

すべての、白いものたちの

すべての、白いものたちの

 

 私は圧倒的に電子書籍派ですし、紙書籍についても文庫があるものは、保管場所の問題と、読むときの持ちやすさ、持ち運びのしやすさ、価格などの理由で断然文庫派なのですが、「すべての、白いものたち」は、紙書籍の単行本で買う意味のある本だなあと思います。

ハン・ガンは全作品追いたいなあと久しぶりに思った作家さん。まだ読破できていないのですが、こちらの作品もよかった! 

ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)

ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)

 

 

3 永井三郎 「スメルズライクグリーンスピリット」 

外出自粛期間に無料で読める電子書籍マンガをひたすら漁ってた時にニルヴァーナっぽいタイトルが気になってとりあえず無料の分冊版を読んだのですが、その後速攻で全2冊とも買いました。無料本の存在と外出自粛期間があったことに感謝です。

かなり痛くて辛いエピソード満載なのに、その辛さに逆らうだけの登場人物の勢いや力強さが、ドライブ感に溢れた筆致で描かれていて、それでいて淡々とした現実認識もあり。そこがこの作者さんの個性なのかもしれないです。

ちなみに「センコウガール」もよかった!

センコウガール 完全版 (1) (裏少年サンデーコミックス)

センコウガール 完全版 (1) (裏少年サンデーコミックス)

  • 作者:永井 三郎
  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: コミック
 

 

4 角田光代訳 「源氏物語 下」

源氏物語 下 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集06)

源氏物語 下 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集06)

  • 発売日: 2020/02/26
  • メディア: 単行本
 

今年出版され今年読んだのが下巻なのでこちらを上げたというのと、源氏の中でも宇治十帖を、ということで。 

学生時代に宇治十帖部分を読んだときは、誰も幸せにならない辛気臭い物語だと思いました。浮舟についても華のない敗残者だと思いました。

けれど現国の先生(だったかな?古文の先生だったかな?両方だったかな?)が「大人になって読み返して、一番面白く感じたのが宇治十帖だった、一番印象が変わったのが宇治十帖だった」と言っていて、それがずっと心に残っていました。

当時はなんとなく「老けるとままならなさにあはれを感じるようになるのかねえ」程度としか捉えられなかったのですが、そういうこともあって、折に触れては読み返していたの源氏物語

で、ある時「なんだかんだで浮舟が少ないリソースの中で一番闘ってるなあ」とふと思って。そう思って読み返す宇治十帖はものすごく新鮮でした。

 下巻に限らず、源氏物語って美男美女の博覧会のような華やかな世界を描いている割には、登場人物のそれぞれの人生はそれぞれに苦いのですよね。幸せってなんだろね…って心境になります。

現在のハッピーエンドが多い人気マンガやドラマに触れていると(当時の大衆の好みは今と同じとは一概にはいえないのはわかるとはいえ)、こういう毒を隠し持った物語を書いた紫式部の覚悟と手強さにも新たな興味がわきました。

また、こういう作品が(一部の階級の一部の女子に限定されるとはいえ)まるで大ヒット漫画のように回し読みされていたのかと思うと、 当時の女子文化をもっと知りたいなあと思ったり。

 

 ちなみに、最近の源氏の解釈はどんなものがあるんだろうと思ってついでに読んで面白かったのがこちら。他にもおすすめがあればぜひ知りたいところです。

NHK「100分de名著」ブックス 紫式部 源氏物語 (NHK「100分 de名著」ブックス)

NHK「100分de名著」ブックス 紫式部 源氏物語 (NHK「100分 de名著」ブックス)

  • 作者:三田村 雅子
  • 発売日: 2015/12/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

5 ヤマシタトモコ  違国物語

1巻からずっと楽しみに追っている作品の最新刊。

両親を交通事故でなくした主人公が、母親とは不仲だった叔母に引き取られ成長していく物語。

元々、親子関係以外での繋がりの可能性を描く、(擬似)家族ものに弱いので、こういう設定には弱いのです。

それとともに「人とは違う、極めて個人的な柔らかで弱くて傷つきやすい感情、弱くて傷つきやすいけれど絶対に譲りたくない考え方、をどう守っていくのか」「守った上で、自己の殻に閉じこもらず、他者との関わりの中で新しい自分を発見することはできるのか、できるならどうすれば良いのか」というところを丁寧に描いているところに魅力を感じています。

 

6 三体

三体

三体

 
三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 
三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

 

 わーい!第二部がやっと出たー!!

去年、話題になっていた1巻がスケールが大きくワクワクしたので、楽しみにしていたのです。

ていうかまだ続くので、とにかく続きが早く読みたいー!!こういうスケールが大きくて続きが気になる物語って良いですよね。

 

7 北村紗衣 「お砂糖とスパイスと爆発的な何かー不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」 

お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
 

 まえがきに「不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」とあります。

まえがきの通り、語り口は堅苦しくなく、ざっくらばんで楽しく読めるフェミニスト批評。フェミニストとか批評とか言われると、それだけでちょっと引いちゃう人にこそ。引いちゃうことについて考え直させられるという点でも。

題材もサッチャーから、いわゆる名作小説、カルト映画からディズニー映画だったりでとっつきやすかったです。

それらに触れた時に薄ら感じた疑問や不快感と「いやでも私の誤読かも」「でもこれを言ったら引かれちゃうだろうから黙っとこう」といった謎の自粛について、歯に衣着せず小気味よく語ってくれているので、「こんな風に文句を言っても良いのだ!」「正当な文句というものだってあるのだ」と勇気をくれる本でもあります。

「なるほどこの作品はこんな視点でも読めるのか」と、他人の批評に流されず、主体的に作品を味わう楽しみも教えてくれた気がします。

軽く読めるエッセイの体裁だけど、参考文献が充実していて、そこから色々読むのも楽しいです。参考文献をちゃんと書いてくれる本は、読者に「その本を読んだ先の続き」をくれるのが良いです。そこも好きなポイントです。

 

 8 前田健太郎 「女性のいない民主主義」

女性のいない民主主義 (岩波新書)

女性のいない民主主義 (岩波新書)

 

 漠然と疑問に思っていたけど、うまくいえなかったことを、わかりやすくきちんと言葉にして説明してくれるという点では前述の本と同様。

こういう「女性の」ってつく作品って「男性の」何らかを主として、それを補足するだけのものって捉えられがちだけど、そうじゃないということも含めて(だって民主主義というからには「民」には女性が含まれているのが当然でしょ?)、まるで神の摂理化のように当然のこととして偉そうに語られている政治、政策について、極めて平易な言葉で「本当にそうなの?」と、自分で考える契機をくれる本だと思います。

 

9  池辺葵 「ブランチライン」

繕い裁つ人」でファンになり、電子書籍化した作品はコンプリート済の作家さんです。大好きだった「プリンセスメゾン」が終わってしまって寂しく思っていたのですが、新たな連載がスタート!嬉しい!!!!

 

10 Christopher Isherwood 「A Single Man」

トム・フォードが映画化した「シングルマン」の原作です。

オーデンの友人ということで存在を知り、「ベルリンよ、さらば」と「ノリス氏の処世術」を図書館で見つけて読んで以来、なんとなく気になる作家だったのですが、シングルマンでそのことを思い出し、いつか翻訳されたら読もうと思いながらもそのままになっていました。が今回休日もほぼほぼ引きこもっていた時期に、だったら原文でチャレンジしよう!と思いたちまして。

洋書を気軽に買えるのも電子書籍の良いところですよね。

ジェームズ・ボールドウィンとクリストファー・イシャウッドは、今のタイミングで日本で再紹介されるべき作家という気がなんとなくしています。

 

11 吉田秋生「詩歌川百景」

詩歌川百景(1) (flowers コミックス)

詩歌川百景(1) (flowers コミックス)

 

 こちらも祝新連載スタート!ということで。

元々吉田秋生さんの大ファンで(バナナフィッシュは勿論、「吉祥天女」とか「櫻の園」とか!!)、海街diaryも楽しみに読んでいました。で、こちらはその海街diaryの後日談でさらっと登場していた子が主人公。海街diaryの主人公の子が鎌倉に来る前に住んでいた温泉街が舞台です。

まだ1巻なので、これからどんな風に話が展開するのかはわからないのですが、それも含めて楽しみです。

 

12  葦原大介 「ワールドトリガー

自分が10代の頃は「大人になってまでジャンプ(的な少年漫画)を読みたくない」と「ジャンプ(的なもの)をくだらないと切り捨てるような大人にはなりたくない」の両方の気持ちがあった気がします。実際はというと、いつの間にか、惰性で続きを読んでいる作品以外への興味を失っていました。

が、外出自粛期間&GW前後に、ジャンプの人気作品の無料公開があって、その時に「名前だけは聞いたことがある有名作品」「何十巻も出ている人気作品(多分)」をまとめよみしたのですよね。

その中で一番面白いなあと思ったのがこちら。

異世界の住人からの侵攻を防ぐために「ボーダー」という組織のメンバーたちが闘う、というのが基調の話なのですが、そのための訓練としてボーダー内でグループを作り、グループで対抗戦をするなかで、各メンバーたちの能力値や特性に合わせた戦いをして成長していくんですね。そこが割と将棋などのゲームっぽい感じで、頭脳戦の面白さがあります。

ジェンダー的に気になるところがないわけではないのですが(オペレーターという後方支援役が女子ばかり、とか)、続きを楽しみにまつ漫画が一つ増えました。

 

13 よしながふみ 「きのう何食べた?

こちらも第1巻からずっと追っている大好きな作品。少しずつ作品内の時間が進んでいて、人が歳を重ねることについて語られる部分が増えたなという印象。

作品に出ている料理が再現しやすく実用的という点でも便利な漫画なのですが、それ以上に、料理のモチベーション自体をあげる効果がものすごく高いため、自炊が面倒になった時にカンフル剤として読み直すことが多い作品。

 

 

番外その1:辞書アプリ

元々辞書についてはそこそこ多めに持っていた方ですし、電子辞書も割と高機能のものを愛用していました。

が、辞書アプリで、国語辞典を複数、各国語の辞書をまとめて購入したらこれがもう便利で!ポイントはスマホで使えるというのと同種の辞書の複数所持、です。

複数所持していると、横断検索で語釈の違いが堪能でき、同じ単語でも「新明解」と「日本国語大辞典」「大辞林」ではこんなに違うのか〜なんていうのがさくっと読めて楽しいのです。国語辞典で調べた言葉の語源も古語辞典ですぐ追えるし。横断検索がすごくしやすいのもアプリの良いところ。

私は体調に不安を抱える身なので、命綱としてスマホだけは肌身離さず持っているのですが、そのおかげで気になる言葉があった時、電子辞書は手元になくてもスマホですぐ検索でき、そこも辞書アプリの良いところだなと思ってます。

アプリを導入するまでは、そういう時はネット検索で済ませていたのですが、やっぱり有料アプリの情報量は圧倒的ですし、信頼性も高いです。(流行語、従前からある言葉の最近の使われ方、商品名や最近の有名人などの固有名詞はネット検索の方が見つけやすいですが。)

また電子辞書だと、語学系、学習系とで元から入っているものが異なり、全部入り、と言ったものがなかったし、語学系でも物によっては別売りのチップ?を買わなければならず、さらには追加で入れられるチップの数に限界があったりと、複数言語を学びたい時に不便だった点もアプリなら問題なし。

もっと多くの辞典がアプリで読めるようになると良いなあ。

 

番外その2:芦部信喜 「憲法

憲法 第七版

憲法 第七版

  • 作者:芦部 信喜
  • 発売日: 2019/03/09
  • メディア: 単行本
 

 第○版 (微妙に年齢を誤魔化す)を大学の必修で読んでいたので番外扱いで。

ここ数年、憲法をちゃんと読み直すべきじゃないのかなあと思うことがしばしばあり、前述の「女のいない民主主義」を読んだことをきっかけにこちらをポチりました。

大学の授業で使うような、さらっと一読できない、ページ数的にも内容的にもボリュームのある本こそ、電子書籍化し、持ち歩いても読めるようにすべきだ!!と常々思っていたので、電子書籍化している!という点に感動しました。

 今、憲法の基本書として何が流行っているのかは知りませんが、私が学生だった頃は、こちらがスタンダードで、実際、元々が放送大学のテキストとして作られただけあって、平易にコンパクトにまとまっていて、初読での読みやすさはトップクラスだったと思います。読み込むとよくぞここまでコンパクトにまとめたなという感じなのですが。

大学を卒業して約20年。仕事の分野以外については色々なことを忘れてしまっているし、そもそも学んだことも、20年も経てば学説が変わっていることも多く、完全に無知。

だから他の分野についても大学の基礎教養で習うレベルの事柄については、一通り学び直したいなと常々思っているのですが、基本書と思われる本を検索しても、とにかく分厚く、しかも電子書籍化していることが稀なため、なかなか手をつけられていません。そういう意味でも電子書籍化してくれたことに感謝しています。

 

番外その3 幸田文 「台所のおと」

台所のおと (講談社文庫)

台所のおと (講談社文庫)

 

 これも初読は10代の頃なのですが、電子書籍化に感謝して。

幸田文ファンなので、電子書籍化はずーっと待ち望んでいたのです。

彼女の短編やエッセイは、読むと背筋が伸びるので大好きなだけでなく、だらしない生活にカツをいれるカンフル剤として、いつでもすぐに読める状態にしたかったし、そういうあり方がぴったりな作品だと思っていたので、今年、結構な数が電子書籍化したことが本当に嬉しい!

その中でも特に大好きな「台所のおと」をここではピックアップしてみました。

願わくば、短編やエッセイだけでなく、「流れる」と「着物」もお願いしまーす!!(ついでに青木玉さんの「幸田文の箪笥の引き出し」も!)

幸田文に限らず、私の偏愛作家はどうも電子書籍化率が低いので(ジャネット・ウィンターソンとかレベッカブラウンとかサリンジャーとかボールドウィンとかアトウッドとかグルニエとか以下延々と続く)、そういう意味でも、ものすごくうれしかったです。

 

余談

結構買った(雑誌のサブスクを含めて)割に、ピンとくるものがなかったのがファッション&ビューティジャンルの本。

コロナによる引きこもりとマスク生活で、お洒落のモチベーションが上がらなかったというのもあるし、ある程度自分のスタイルが決まってきたのと、流行をガッツリ追わなくても許される年代になってきたというのがあるのかなあとは思います。

他方で、綺麗なものが好きだしお洋服も好きなので、こういうジャンルは実用本としてではなくビジュアルブック的に楽しむことも多かったのですが、ここ数年、この手のジャンルの本も夢がなくなったというか実用に徹している本が多くて、眺めて楽しい本が減ったのも原因なのかなとも思います。

なんというかファッションに夢がなくなって、安くて実用的でないとダメだというプレッシャーを業界全体が感じていそうなシビアな現実と向き合い続けている感じ。なので読んでも気分が上がらないというか。

内容的にも、実用に徹すると内容がある程度パターン化するので、何冊も読むとマンネリ化しちゃうというのもあるのかもしれません。

在宅勤務日は(特にボトムは)ある程度自由がきくので、来年は、もうちょっと自由で楽しいファッション本に出会いたいなあと思います。